【ケアラー向け】成年後見制度にかかる費用についてわかりやすく解説します
前回の「成年後見制度とは」では、成年後見制度が役立つ場面と利用のメリット・デメリットを分かりやすく説明しました。今回は、成年後見制度を実際に活用する際に、どれくらいの費用がかかるのかについて詳しく解説します。
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成年後見制度とは(前回の復習)
後見人は、家庭裁判所が本人に対して適切な援助者を選び、その人が本人のために法的な面で支える活動を行うかどうかを客観的に判断されて開始される制度が成年後見制度です。
後見が始まると何を失うのか
後見が開まると、ご本人の印鑑登録は抹消されます。また、医師や士業等の資格や、会社役員などの社会的地位も失うことになります。こうしたことから、年齢を重ねて認知機能が衰え始めた方の中には、後見制度を利用することに躊躇する方がいらっしゃいます。
申立てとは
成年後見制度を利用するためには、家庭裁判所に申立て(もうしたて)を行います。
「申立て」とは、ご本人あるいはご本人の家族が申立人(もうしたてにん)となり、家庭裁判所に対して一定の行為を要求することです。ご本人が住民登録をしている住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。この手続きを行うことが本人の保護となると考えられているので、家庭裁判所では、下記の費用について本人負担とする裁判を行います。審判が確定したら、家庭裁判所によって選ばれた後見人等に対して、本人の財産の中から本人負担とされた手続き費用の償還を求めることができます。
申立てにかかる費用と継続的な費用
家庭裁判所に成年後見制度の利用を申立てる際には、以下のような費用がかかります。金額は経年により変化しますので、こちらをご参照ください。
家族が家庭裁判所に申立てをする場合の費用
申立手数料及び後見登録手数料:3,400円(手数料800円+貢献登記手数料2,600円)
代理権または同意権の付与:各800円
送達・送付費用:3,720円または4,920円
鑑定費用:実費
※代理権:本人に代わって、本人のために取引や契約などを行う権限
※同意権:本人の行為に対して賛成の意思を示す権限
※本人の判断能力がどの程度あるのかを医学的に判定する手続きのことを鑑定と言う。
専門家に依頼して家庭裁判所への申立てを代行してもらう場合の費用
申立て費用:10万円程度(裁判所に払う手数料や専門家への報酬)
※上記の料金は含まれます。
医師の診断書代:10万円程度
※本人の判断能力を確認するために裁判所が医師に診断を依頼する場合には、医師の診断書を得るために必要な費用が発生する 審判で本人負担とされた場合には、本人の財産から清算することが出来ます。
医師の診断書の作成費用
ご本人のかかりつけの病院に行って、医師の診断書を得る際には作成費用が掛かります。この費用は病院ごとに異なりますが、数千円程度です。
住民票、戸籍抄本の費用
これらの発行手数料は各自治体によって異なります。
登記されていないことの証明書の発行手数料
収入印紙300円分
後見人報酬:毎月約2~3万円(財産の多さなどの事情で変わります)
家庭裁判所が報酬額を決定する審判をします。その報酬は,本人の財産から支払われます。目安はこちら。仮に、毎月3万円の報酬を支払う場合には、成年後見制度を20年間利用した場合、720万円の費用が発生します。月額3万円×12ヶ月×20年=720万円
費用の助成制度もある
もしお金の負担が大きいと感じる場合、自治体によっては、費用を助けてくれる助成制度もあります。下記のサイトを確認してみましょう。
●日本司法支援センター 法テラス
家庭裁判所への申立てに際して、弁護士や司法書士に依頼する費用は経済状況の一定の要件を満たすと、法テラスの『民事法律扶助制度』を利用できる場合があります。民事法律扶助業務とは、経済的に余裕のない方などが法的トラブルにあったときに、無料で法律相談を行い(「法律相談援助」)、必要な場合、弁護士・司法書士の費用等の立替え(「代理援助」、「書類作成援助」)を行う業務です。
●公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート相談窓口
リーガルサポートは成年後見制度を担う司法書士の団体です。全国の相談窓口の情報が掲載されています。成年後見制度を担うための司法書士が、このリーガルサポート相談窓口を設立しました。
●成年後見制度利用支援事業
生活保護受給者や経済状況の一定の要件を満たす方は、各自治体で設けられている後見人の報酬の助成制度(成年後見制度利用支援事業)があります。成年後見制度を利用する必要がある認知症高齢者、知的障害者及 び精神障害者で、成年後見制度の利用に要する費用を補助されなければ成年後見制度の利用が困難であると認められる者に対して、成年後見制度の申立てに要する経費及び後見人等の報酬の全部又は一部が助成される事業です。詳細は、本人の住民票がある地域の役所や福祉窓口で相談することができます。
この他に、厚生労働省では、成年後見制度利用促進に関する情報を同HPに示しています。
次回は、成年後見制度を利用すべきかどうか、についてお伝えします
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執筆者
株式会社コナトゥスマネジメント
代表 平原孝之
シニアライフカウンセラー
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